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admin2 さんの日記

 
2014
12月 4
(木)
08:51
地域通貨について
カテゴリー  論文
本文
地域問題に対する住民の支援と参画-エコマネー研究-


● 「エコマネー(ECO-MONEY)」とは
 「エコ・マネー」とは、”エコ”と言う名称が示すように、本来は環境活動を意味する用語であっ
 たのですが、現在はそれを超えた広い社会活動を網羅する言葉として使われるようになりまし
 た。むしろ、「地域通貨」という一般的な呼称の方が実態を表しているように思われます。
  「エコ・マネー」も「地域通貨」も、最近はブームとしてもてはやされ、その定義や仕組みを明ら
 かにしないまま、安易に便宜的に乱用されています。
  今回、私たちは「情報要覧-エコ・マネー特集」を編集するに当たって、大量の情報を読みと
 りながら、大雑把に次のような「地域通貨」の概念を整理し、それに基づいて情報収集の範囲
 を定め、情報分類と枠組みを設定しました。
 
  目的:地域の住民組織や地域団体などが、多様な社会問題の改善や解決を図るために、
  対象:金銭的な報酬を目的としない、住民の物品や労役の提供による無償の奉仕に対して、
  証書:その貢献度を換算した得点やポイントを記録した一種の証書(切符)を交付し、
  流通:その証書を加盟組織や企業からの恩典や特典が得られる”代替通貨”として流通させ、
  報償:貨幣の支払いによらずに、買い物の際の値引きや物品、サービス等を入手できる、
  制度:従来の経済・商行為、社会制度を補完・代替する、創造的な「交換制度」を言う。
  


● 「地域通貨」の問題点

  現在の「地域通貨」は、表面的には「その1」で示したような形式を取ってはいますが、実際は自治体
 主導の一過性の地域振興、環境対策、弱者救済事業に安易に利用されたり、商店街などの集客活動
 のイベント代わりに転用されたり、あるいは実務能力のない住民団体やNPOなどの呼び物として便宜
 的に採用されたりして、実力をもった「代替通貨」には育っていないように見受けられます。
 「エコ」という崇高な精神が濁ってしまって「エゴ」通貨に堕落しそうな気配すら感じます。
  下に、「地域通貨」の流通と定着を阻害している要因を列挙してみました。現在、あるいは将来この
 問題に取り組む人々は、この問題にどう対処し、解決を図るかをしっかり検討しておく必要があります。
  
  限定性:通貨を入手できる協力・奉仕活動の範囲が限定され、多くの住民の参加機会が狭い。
  互換性:個々に発行された通貨に使用範囲が限定され、かつ相互の通貨の互換性がない。
  認知度:地域通貨とその対象活動に関する啓蒙活動が不足し、住民の関心と認識が低い。
  価 値:地域通貨で入手出来る恩典・特典、報償が、”粗品・景品””値引き”で価値がない。
  受益者:地域通貨に対して恩典・特典を提供する負担が、商店や企業などに偏重している。
  主催者:通貨の発行元が、代替通貨の本質(価値)や通貨が必要な社会問題を理解していない。
  発行量:上のような問題が重なり、通貨の貨幣価値、通用範囲、発行量(利用)が高まらない。
   


● 「地域通貨」を必要とする社会問題

  「地域通貨」という画期的な「交換制度」を定着させ、代替通貨の発行・流通量を増やしていくため
 には、「その2」で示したような問題を克服していくしか突破口はありません。まずは、「交換制度」
 や代替通貨を必要としている問題の全容を把握することを提案します。
  今、私たちが、個人・地域として直面している問題は、環境維持・省資源、高齢者・障害者支援、
 介護・医療、健康増進、育児・教育(児童・社会人)、人権保護、住民間の交流、国際交流、就労確
 保、産業振興・商業活性化、過疎と町・村おこしと多岐にわたります。こうした個人に直結する社会
 問題は、国や自治体、官僚や役人の人間性を欠いたサービスでは、満足のいく成果は得られませ
 ん。住民ひとりひとり、近隣組織、非営利的な連携組織が参加して、わがことのように問題を解決
 していく臨戦態勢が必要です。
  おそらく、「地域通貨」は、こうした住民の活動を結ぶ”結節点”になるように思います。今回私たち
 が編集した「情報要覧」では、現象としての「地域通貨」の動向を検討するだけでなく、その可能性と
 問題点を掘り下げて考えるために、代表的な社会問題として「地域振興問題」「高齢者・母子育児・
 障害者問題」「環境・資源問題」にも焦点を当て、先ず冒頭にこれらに関する最近の情報を収載する
 ことにしました。
   


● 新社会制度としての「地域通貨」

  「地域通貨」の本質を理解する上でもう1つ重要なことがあります。それは、こうした仕組自体が、
 
 非行政的(Non-Govermental)で非営利的(Non-Profit)な組織や団体の非企業的(Non-Business)
 な活動によって支えられ、しかも需要と供給が、市場や商取引の外(Non-Market)で、通貨や価格を
 媒体としない(Non-Money)関係で結ばれているという事実です

 これは、「地域通貨」を媒介とする社会活動が、従来の政治・経済の仕組みとは異質の、全く新しい
 制度であるということを意味しています。いわば、政治や経済・企業の論理によらない、まさに「生活
 者のための、生活者が作った、生活者本位の互助の制度」、誰かの利害に支配される資本主義や
 社会主義、民主主義とも違う、生活者を軸にした「生活者本位主義」とでも言うべき画期的な体制と
 も言えるでしょう。
  伝統的な論理や概念、従来の経験や先例の通用しない、新しい仕組みですから、まだみんなが模
 索と実験を続けている段階にあります。しかしそれは、だれもが不可欠だと考えている制度であり仕
 組みでありますから、挫折と試行錯誤を繰り返しながら、それなりの形を作り上げていくことは間違
 いありません。
  現実の問題を処理・救済する活動に積極的に着手する一方で、どうすれば上記のような理想の新
 制度を構築できるかの本質的な仮説づくりも必要なようです。



● 「地域通貨」の名称について
 
 「地域通貨」とは、非行政的・非営利的な仕組みを通して、生活者の需要・供給を結ぶ「交換手段」
 であるとも言えます。しかし、それが非企業的(Non-Business)かつ、非市場的(Non-Market)な取
 引関係で、しかも非貨幣的(Non-Money)な決済によるところに制度としての意味があるのなら、基
 本的な「交換手段」の名称に「通貨」という言葉を使ったのでは、折角の概念が死んでしまうように思
 えます。
  安易に外来語を使って、しかも手当たり次第に「エコ・マネー」と拾把一からげに呼ぶのも、軽薄に
 過ぎます。むしろ貨幣によらない交換なのですから、そこに使用される「証書」そのものの名称を使
 用することを勧めます。例えば、「券」「札」、「切符」という用語、交換証書的な意味をもたせるなら
 「為替」という表現もあります。
  活動の趣旨や性格が「奉仕・支援・協力」にあるのですから、こうした行動上の名称を組み合わ
 せて、例えば「奉仕切符」とか「支援券」と呼ぶこともできます。取引的な意味を持たせるなら、「奉
 仕為替」「善行為替」と呼んでも良いかもしれません。
  私たちは環境問題や地域通貨の専門家ではありませんが、情報を収集し、そこから物事の動きを
 捉え、そこに潜む本質や原義を究明した上で、その事象にふさわしい言語や表現を作り出すという
 仕事をしている立場からすれば、「エコ・マネー」や「地域通貨」に関する論議や論調は、現象や風
 潮を追い求めることが先行し、深い考察と理論、言語表現がおざなりになっているように思われます。

 「地域通貨」編 終わり

 

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